米津玄師自身、過去のインタビューや公式コメントにおいて、本作について「自分がこれまで作ってこなかったような、純度の高いラブソングを作りたい」という強い創作意欲を持っていたことを明かしています。
『Lemon』『馬と鹿』『感電』など、死生観や社会と個人の摩擦、疾走感あふれる人間賛歌を次々と世に送り出してきた彼が、なぜあえて「私小説的ともいえる恋愛」という古典的テーマを選んだのか。そこには、ポップマエストロとしての飽くなき探求心がありました。取材資料や本人の言及を紐解くと、ドラマ『リコカツ』の「離婚活動」という特異なプロットが強力な契機となったことが分かります。
ゼロから惹かれ合う物語ではなく、「一度は深く愛し合い、結ばれたはずの二人が破局へと向かう過程で、皮肉にも本当の愛を見つめ直す」という構図。この逆説的なドラマツルギーに触発され、記号化された甘い恋物語ではなく、痛覚と後悔、そして赦しを伴う「本物のラブソング」を構築する試みが結実したのです。