大統領の外遊時、沿道やテレビ中継で車列(モータケード)を見ていると、ナンバープレートまで完全に同一の外見をしたビーストが必ず2台以上連なって走行している光景を目撃します。
これは敵の狙撃手やテロリストに「どちらの車両に大統領本人が乗っているか」を悟らせないための「デコイ(おとり)戦略」です。車列の走行順序は警護作戦ごとにランダムに入れ替えられ、移動中も緊密な通信によって搭乗位置の情報が秘匿されます。
米国外への公式訪問時、これらの車両は米空軍の大型輸送機「C-17 グローブマスターIII」によって現地へ直接空輸されます。大統領が現地入りする数日前には専用車両、随伴する通信司令車、警護特殊部隊(CAT)の武装バンが配備され、現地のインフラに頼らない自給自足の警備網が完成します。
ドライバーを務めるのは、過酷な選抜を通過したシークレットサービスの専門インストラクターです。8トンを超える巨体を操り、障害物を回避しながら瞬時に車体を180度旋回させて逃走する「Jターン」などの特殊脱出ドライビングテクニックを極限環境で訓練し続けています。