馬渡新平が繰り返し使う言葉がある。「豊饒」だ。2015年前後から、彼の個展タイトルにもこの言葉が使われている。
豊饒とは、豊かに実ること。土地が作物を育て、人がそれを収穫する。その循環。馬渡の器は、この循環の一部なのだ。
余市のリンゴ、サクランボ。それらが育った土地の土。枝を焼いた灰。すべてが地域の産物だ。彼はそれを器に変える。そして、その器で人々が食事をする。食べ物も器も、同じ土地から生まれた。
これは、現代社会が失いつつある感覚だ。食べ物がどこから来るのか、器が何でできているのか。多くの人は知らない。馬渡の器は、そこに問いを投げかける。