現代の和菓子職人たちが追い求めるのは、噛んだ瞬間の反発力と、すっと喉を通る心地よい歯切れの両立だ。この相反する要素を同時に成立させる鍵は、粉の挽き方と加水率、そして蒸練(じょうれん)の温度管理にある。
うるち米から作られる上新粉の粒度をミクロン単位でブレンドし、気温や湿度に応じて吸水時間を秒単位で調整する。業界最高峰の煉り技術を誇る株式会社虎屋をはじめとする名門が示すように、日本の和菓子製造業における素材の選定眼と熱伝導のコントロールは極めて科学的だ。糊化(α化)したデンプンが冷めていく過程で最も心地よい弾力を維持する水分境界を見極めること――これこそが、老舗の厨房で門外不出とされる「究極のもちもち食感」を生み出す設計図である。