こそあど言葉を正しく理解するための第一歩は、空間的・心理的な距離に応じた「系列」の把握にあります。国語学では、指し示す対象と話し手・聞き手との位置関係に応じて、近称(こ系列)・中称(そ系列)・遠称(あ系列)・不定称(ど系列)という4つの区分を設けています。
言葉の使い分けを整理した以下の比較表で、それぞれの品詞と距離感の対応関係を確認してみましょう。
小学校国語指示語の学習では、まず身体感覚を用いた覚え方が推奨されます。「自分の手元にあるリンゴは『これ』」「相手が手に持っているペンは『それ』」「窓の外の遠くに見える山は『あれ』」「並んだ果物から選ぶときは『どれ』」というように、話し手と聞き手の物理的な縄張りを基準にインプットするのが鉄則です。
実際の会話で使われるこれそれあれどれ例文を見ると、その境界線が明確に浮き彫りになります。
「これは私が昨日購入した最新型のノートパソコンです」(近称:話し手のテリトリー)
「それは君が今読んでいる企画書のことかい?」(中称:聞き手のテリトリー)
「あれに見えるのが新しく完成したランドマークタワーだ」(遠称:双方から離れた客観的領域)
「この3つの選択肢のうち、君が最も現実的だと思うのはどれですか?」(不定称:未特定の対象)
このように、視界に事物がある状況下では、物理的距離の遠近に従うだけで迷うことはほとんどありません。問題が生じるのは、目に見えない話題や文章を扱う領域に足を踏み入れた瞬間です。