情報提供に対する対価、すなわち「エス代」と呼ばれる報酬の仕組みも、公安警察の秘められた側面のひとつだ。国費として投じられる捜査費の中から、現金手渡しで支払われるのが通例である。そこには領収書も存在せず、公的な監査の目が直接届くこともない。
金額は提供される情報の重要度によって数万円の小づかい程度から、時に数百万円単位に及ぶこともある。しかし、金銭だけで人間を縛り続けることは困難だ。そのため、捜査官は金銭的報酬に加え、「自分を理解してくれる唯一の味方」という心理的アタッチメントを巧妙に形成する。孤独感や自己承認欲求を満たすことで、協力者は自らがリスクを犯して情報を流しているという感覚を麻痺させていく。