いま市場を牽引しているのは、ただのパイプや踏み板ではない。ドアを開けると車体下部から滑らかにせり出し、閉めればサイドシルに吸い込まれるように消える「電動格納式」だ。かつては最高級フルサイズ輸入SUVの特権だったこのギミックが、2026年の今、国産ミドルサイズSUVやミニバン向けに怒涛の勢いで普及している。
鍵を握るのは、車内CAN通信(車載ネットワーク)との連携だ。スマートキーを持って近づくだけで、あるいはスライドドアの開閉センサーとミリ秒単位で同期し、無音に近いブラシレスモーターがステップを送り出す。夜間には足元を照らすアンビエントLEDが路面を淡く照らし出し、高級ホテルのエントランスのような演出さえこなす。閉まり切った瞬間、ステップはボディラインと完全に一体化し、地上高もスポイルしない。「見せびらかすためのパーツ」から「必要な瞬間だけ寄り添う黒衣」へ。この美学の転換が、デザインに妥協したくない都市部ユーザーの琴線を激しく揺さぶっている。