柾木玲弥という役者の名が世間一般に決定的な形で浸透した契機といえば、やはり福田雄一監督が手掛けた日本テレビ系ドラマ『今日から俺は!!』の佐川直也役だろう。賀来賢人演じる三橋貴志や伊藤健太郎演じる伊藤真司の同級生であり、不良たちに絡まれてはボコボコにされ、情けなく助けを求める「愛され系ヘタレヤンキー」を怪演した。
佐川役で見せた白目を剥くようなオーバーアクションや、漫画からそのまま飛び出してきたかのような顔芸、間の抜けた甲高い叫び声は、高度な身体コントロールとコメディセンスがなければ単なる寒々しい芝居に堕ちてしまう危険を孕んでいた。それを絶妙なリアリティの着地点に着地させ、視聴者を爆笑させた技量は業界内でも高く評価された。
一方で、彼の真骨頂は喜劇だけにとどまらない。園子温監督のドラマ『みんな!エスパーだよ!』での矢部直樹役をはじめ、狂気を孕んだエキセントリックな青年役を演じさせれば右に出る者はいない。さらに2026年の主演映画『大阪闇金』では、西成の闇金業者という裏社会のダークな男を陰影豊かに演じ切り、中野英雄らベテラン俳優陣を相手に重厚な存在感を放った。映画『三日月とネコ』などの文芸的テイストの作品にも溶け込み、陰と陽、狂気と平穏を自由に行き来する振り幅の広さこそが「カメレオン俳優」と呼ばれる所以だ。