音楽理論の観点からも、『Missing』の構成は極めて緻密に設計されています。ベースとなるコード進行は、日本のリスナーに馴染み深い切ないマイナー進行を基調としながらも、随所にソウル・ミュージック特有のテンションコード(7th, 9th)や緻密なベースラインの下降クリシェが組み込まれています。これにより、過度にウェットにならず、洗練された都会的な響きを保ち続けています。
サビに向けた感情の高まりとともに展開されるコード進行の巧みさと、クライマックスでのドラマティックな転調は、聴き手の感情を極限まで揺さぶります。一方で、ボーカリストにとってのカラオケ難易度は最高峰のレベルに位置します。
16ビートの細やかなハネ感(スウィング感)を維持しながら、音程を正確にトレースするピッチコントロール、胸声から裏声(ファルセット)への滑らかな切り替え、そして感情を込めた繊細なフェイクが要求されます。単に音程を追うだけでは平坦な歌唱になってしまい、リズムのタメやブレスのコントロールができて初めて、楽曲の持つ色気と切なさが立ち現れます。