日本の歴史的な風情を今に伝える京都府京都市。その中心地に位置する祇園甲部をはじめとする花街では、今も「一見さんお断り」の慣習が脈々と受け継がれている。なぜ紹介者のいない客の入店を制限するのか。その最大の理由は、独自の「お茶屋制度」が持つ特殊性に起因する。
お茶屋は単に料理や酒を提供する場所ではない。芸妓や舞妓を手配し、客の好みに合わせた最高の宴席を演出するプロデュース空間だ。そこでは客の好み、予算、仕事上の文脈までを熟知したうえで、究極のホスピタリティが提供される。見知らぬ客を無条件に受け入れてしまえば、空間の空気感や既存客のプライバシーが損なわれるリスクが生じる。伝統を守る日本伝統文化の現場において、質の高いサービス空間を維持するための必然的な選択なのだ。