京都の町並みに溶け込む中華料理が、なぜこれほどまでに特別な敬意を集めるのか。その源流を辿ると、昭和の京都中華の開祖と称される料理人・高原源吉(たかはら げんきち)氏の存在に行き当たります。戦後間もない時代に中華料理店「飛雲」を開き、その後「第一樓」「平和園」を経て1967年に創業した伝説の広東料理店こそが「鳳舞(ほうまい)」でした。2009年に惜しまれつつ閉店した鳳舞で長年腕を振るい、その確固たる技術と哲学を正統に継承して2010年に立ち上げられたのが「広東料理 鳳泉」です。
多くのファンが関心を寄せる「鳳泉と鳳舞の違いと経緯」ですが、料理の骨格は極めて忠実でありながら、現代の客層に寄り添った繊細なアップデートが施されています。鳳舞時代からの常連客が「一口スープを啜った瞬間にあの昭和の記憶が鮮やかに蘇る」と証言するように、鶏ガラや豚骨をベースに濁らせず丁寧に抽出された上湯(シャンタン)スープの透明感、そして脂っこさを一切感じさせない軽やかな後味は、かつての花街の旦那衆や舞妓さんたちに愛された仕立てそのものです。
匂いが残るニンニクや生姜を極力控え、素材の持つ自然な甘みと昆布や鰹出汁に通じる旨味の引き算を追求する姿勢こそ、京都中華における鳳泉人気の理由にほかなりません。町中華というカテゴリーを超え、懐石料理にも通じる静謐な美学が、一皿ひと皿の料理に宿っています。