南禅寺の参道から少し外れた静謐な路地の奥。重厚な門の向こうに広がる景色を、日常のなかで目にする者は多くない。一般公開が常時行われていないため、建築関係者の間でも「幻の邸宅」と称されてきた歴史がある。
近年、世界の都市計画家や建築家たちの関心は、単なる観光資源の消費ではなく、プライベートな歴史空間がどのように環境と共生し、文化覚書として維持されるかという点にシフトしている。モダニズム建築の波が押し寄せた時代に、あえて伝統的な木造数寄屋と自然景観の究極的な調和を追求した建築哲学。そこには、現代都市が失った持続可能性へのヒントが詰まっている。