長年、日本の都市部におけるサードプレイスの主役はスペシャルティコーヒーだった。浅煎りの酸味や強烈なエスプレッソがもたらす覚醒感は、効率とスピードを求めるビジネスシーンと合致していた。だが、常に「オン」の状態を強いられるSNS社会において、急速なカフェインの上昇と下降は集中力の枯渇を招く原因にもなっていた。
ここで台頭したのが、じっくりと煮出すチャイである。スパイスの複雑な香気成分が鼻腔をくすぐり、一口飲むごとに胃の底からじんわりと温まる感覚。Z世代を中心とする若年層は、これを「整う」ためのアンチテーゼとして捉えた。覚醒させるのではなく、優しくグラウンディング(接地)させる感覚が、カフェ文化のトレンドを塗り替えつつある。