新庄耕の同名小説を映像化したNetflixシリーズ『地面師たち』は、世界的ヒットを記録した。綾野剛や豊川悦司が演じる詐欺グループの冷徹な手口と狂気に満ちたクライムサスペンスは視聴者の度肝を抜いたが、実録ドラマとしての演出と積水ハウスが直面した生々しい現実はいくつかの点で決定的に異なっている。
ドラマでは血生臭い暴力や登場人物の怪死がスリリングに描かれたが、現実の事件において積水ハウスを欺いた最大の武器は「物理的暴力」ではなく「組織の心理的盲点」だった。四半期決算のノルマに追われ、他社に優良物件を奪われることを極度に恐れた不動産デベロッパーの焦燥感。それこそが詐欺師たちにとって最大の餌となったのである。
劇中のデベロッパー担当者が極限状態へと追い詰められていく様はリアルそのものだが、現実の積水ハウス内部では、法務部や現場からの「偽物ではないか」という強いアラートが何度も握りつぶされていた。フィクション以上のホラーは、組織の硬直化と上層部への忖度によって自ら罠に飛び込んでいった企業側の意思決定プロセスそのものにある。