東京キネマ倶楽部の扉を開けた瞬間、来場者が一様に息をのむのは、現代の機能性重視のライブハウスでは決して味わえない「圧倒的な非日常の重厚感」です。この空間のルーツは、昭和後期に社交場として隆盛を極めた高級グランドキャバレーにあります。かつて夜な夜な政財界の重鎮や文化人が集い、生バンドの演奏をバックに華やかな夜を過ごした社交空間の設計思想が、現在もそのまま息づいています。
ライブホールとして決定的な強みとなっているのが、メインステージの上手(客席から見て左奥)に設置された「サブステージ(中2階バルコニー)」と、そこへと繋がる「優美な螺旋階段」の存在です。通常のライブハウスではステージ正面からの平面的・直線的なアプローチしかできませんが、東京キネマ倶楽部では、ボーカルが螺旋階段からドラマチックに登場したり、サブステージでホーンセクションやゲストが演奏を繰り広げたりといった、劇場の舞台劇のような立体演出が可能になります。
音楽関係者の間でも「ここでしか作れない世界観がある」と評されており、昭和歌謡やジャズ、ゴシック、プログレッシブロック、アコースティックから、コンセプチュアルな世界観を持つアイドルや劇団まで、幅広いジャンルの表現者が「特別な単独公演の舞台」としてこの場所を指名し続けています。高い吹き抜け天井に灯るシャンデリアと真紅のベルベットカーテンは、観客を日常から切り離し、演者と観客が一体となって濃密な物語へダイブするための完璧な装置として機能しています。