鳥取三津子氏のプロフィールを紐解くと、従来の重厚長大企業における代表取締役のキャリア像とは一線を画す、圧倒的な「現場たたき上げ」の軌跡が浮かび上がります。
鳥取氏は1964年生まれ、福岡県出身。地元の活水女子短期大学英文科を卒業後、1985年に東亜国内航空(のちの日本エアシステム:JAS)へ客室乗務員として入社しました。当時、日本航空の本流エリートといえば東京大学や京都大学などの法学部・経済学部を卒業した事務系総合職が占めるのが通例であり、短大卒の女性CAが将来のメガキャリア社長になると予測した関係者は一人もいませんでした。
転機となったのは2002年のJALとJASの経営統合です。文化や処遇の違いから統合摩擦が生じるなか、鳥取氏は現場の融和と安全基準の平準化に尽力しました。特に2005年、相次ぐ運航トラブルを受けて設立された「安全推進本部」の立ち上げに関わり、後の客室安全推進部長に就任。ここで培った「安全は机上の理論ではなく、現場の小さな気づきと規律から作られる」という信念が、彼女の経営哲学の強固なバックボーンとなっていきます。
その後、2019年に客室専務執行役員、2026年に執行役員客室本部長、2026年には取締役専務執行役員およびグループCCO(最高顧客責任者)を歴任。パンデミック禍による航空需要の蒸発という未曾有の危機において、顧客満足度の維持と現場スタッフのモチベーション管理を一身に担い、社内での信望を決定づけました。