相手が言ったことに対して反論したいわけではないのに、なぜ「いや」が先走ってしまうのか。その根本にあるのが、自己を守ろうとする防衛本能だ。
心理学の知見によれば、人が会話の冒頭で発する「いや」は、相手への攻撃というよりも、自分の領域を侵されないための心理的なバリアーとして機能している。会話の主導権を失う恐怖や、自分の知識・立場を正当化したいという潜在的な欲求が、無意識に第一声の否定語となって表出するのだ。
特に、日常的にストレスを抱えている人や自信のなさから身を守ろうとする人ほど、無意識にこの防衛本能を働かせがちだ。本人は単なる接続詞や相槌の代わりとして使っているつもりでも、受け手にとっては立派な「否定」として届いてしまう点が、この問題の根深いところと言える。