水割りを巡る論争で最も多く耳にするのが、「焼酎が先か、それとも水が先か」という疑問です。結論から述べると、アイスで飲む水割りにおける正解は「氷を入れたグラスに焼酎を注ぎ、その後に水を注ぐ」順番です。これには単なる作法にとどまらない、流体力学と比重の明確な科学的理由が存在します。
液体の比重を比較すると、純水が約1.00g/cm³であるのに対し、一般的な25度の本格焼酎に含まれるエタノール(エチルアルコール)は約0.79g/cm³と水よりもはるかに軽い性質を持っています。25度の焼酎全体の比重も水よりわずかに軽くなります。そのため、先に注いだ焼酎の上から比重の重い水を注ぎ入れると、重い水が自然とグラスの底へ沈み込み、アルコール分子の間を縫うように落ちていきます。
この比重差によってグラス内部で自然な対流が発生し、人の手で無理にかき混ぜずとも、アルコールと水が分子レベルで均一に馴染み合います。逆に水を先に注ぎ、後から比重の軽い焼酎を注いでしまうと、焼酎が水の上に浮いた状態(層分離)になりやすく、最初の一口だけがアルコール臭く、底へ行くほど薄いという致命的なムラが生じてしまいます。
なお、温かい「お湯割り」においては「お湯が先、焼酎が後」という逆の手順が基本とされます。これは温かいお湯によって冷たい焼酎が沈み込む熱対流を利用するためです。冷たい水割りにおいては、温度ではなく純粋な比重差を利用するため、焼酎を先に注ぐことこそが、口当たりを劇的にまろやかにする決定的な理由となります。