香川照之の半生は、父への執着と拒絶の歴史そのものだ。若き日の香川が父を訪ねた際、「今の私にとって、あなたは子ではない」と冷酷に突き放されたエピソードは有名である。それでも香川は俳優として狂気的なまでの演技力を磨き上げ、日本アカデミー賞の常連となった。
彼を突き動かしていたのは、紛れもなく「猿之助の血」だ。泥臭く、執念深く、観客の心を鷲掴みにするその芸風は、絶縁していたはずの父・三代目猿之助の生き様と完全にシンクロしていた。後年、奇跡的な和解を果たし、歌舞伎の道へ進んだのも、血の呪縛から逃れられなかったからに他ならない。