島を訪れる人々が最も熱い視線を注ぐのが、透き通った身が丼一面に輝く生しらす丼だ。その圧倒的な知名度を牽引してきた立役者といえば、株式会社とびっちょに他ならない。看板メニューの豪快な盛り付けと新鮮な魚介の組み合わせは、江の島の海鮮料理のスタンダードを塗り替え、いまや湘南グルメの代名詞として定着した。
ただし、飲食業の現場において生しらすは極めてデリケートな食材だ。当日の天候や波の高さ、片瀬漁港の水揚げ状況によって入荷の可否が刻一刻と変化する。地元筋の料理人が口を揃えるのは、「禁漁期が明けた春先から初夏、そして秋口の穏やかな日の午前中こそが真骨頂」という事実だ。海が荒れて生しらすの入荷がない日でも、丁寧に出汁を含ませた釜揚げしらすや地魚の漬けを組み合わせた丼を選べば、落胆どころか海の恵みの深さに驚かされることになる。