「自分は人前に出ると緊張する性格だから」という従来の説明は、もはや過去のものになりつつある。最新の認知心理学における知見によれば、言葉が出なくなる現象の多くは、脳が受ける「過剰な自己監視ストレス」に原因があるという。自分を良く見せたい、失敗したくないという意識が強すぎるあまり、脳の処理言語領域にブレーキがかかってしまうのだ。
日本心理学会のシンポジウムでも近年、対人コミュニケーションにおける感情制御と脳の認知負荷に関する議論が活発に行われている。相手の表情や反応を気にしすぎる「読みすぎ」の傾向が、スムーズな発話を阻害する最大の要因になっていることが示された。
また、視覚情報や聴覚情報が相手に与える影響について語る際、必ず引用されるのがアルバート・メラビアンによる実験データだ。いわゆる「メラビアンの法則」によれば、人物の第一印象や感情の伝達において、言語情報そのものが占める割合はわずか7%に過ぎない。残りの93%は表情や声のトーンといった非言語情報が占めている。つまり、発言内容の完成度に囚われすぎることこそが、緊張を生む罠となっているのだ。