日本の洋食文化を語る上で、横浜の歴史は避けて通れない。名門「ホテルニューグランド」で初代料理長を務めたサリー・ワイル氏のもとで修行を積んだ創業者・石橋豊吉こそが、この店の礎を築いた人物だ。当時、高級ホテルで提供されていたナポリタンはフレッシュトマトや生トマトのソースを使った高額な料理であり、戦後の混乱期に暮らす庶民にはとても手の届かない憧れの存在だった。
「安くて美味しい洋食を、街の人々に腹一杯食べてほしい」。石橋豊吉のその強い想いから、生トマトの代わりに当時手に入りやすかったトマトケチャップを使用するアイデアが生まれた。現在、日本中の家庭や喫茶店で愛されているケチャップ仕立てのスパゲティナポリタンは、まさにこの野毛の地で庶民のための味として再構築され、定着していった歴史がある。