店頭で多くの人が陥る最大の誤解が、「国産牛=日本の牛=和牛」という混同です。食品表示法および農林水産省のガイドラインにおいて、この両者には厳格な境界線が引かれています。
国産牛の定義とは、品種や出生地を問わず「日本国内での飼育期間が最も長い牛」を指します。仮に海外から生体輸入された牛であっても、日本での肥育期間が原産国より1日でも長ければ「国産牛」として流通します。スーパーで見かける一般的な国産牛の大半は、牛乳を搾り終えたホルスタイン種(乳用種)や、乳牛と黒毛和牛を掛け合わせた交雑種(F1)です。
対する和牛は、明治時代以前からの在来種に外国種を交配し、長年の選抜育種によって固定化された「4品種とその交雑種」のみに限定された品種名です。牛トレーサビリティ法により、出生からと畜に至るまで10桁の個体識別番号で血統が厳格に管理されており、勝手に和牛を名乗ることは法律で厳禁とされています。
肉質における最大の違いは、筋肉繊維の細かさと脂肪交雑(サシ)の入り方にあります。乳用種由来の国産牛は筋肉繊維が太く、脂は筋肉の周囲に付きやすいのに対し、和牛は筋繊維の隙間に極めて細かい脂が網目状に入り込む形質を獲得しています。パックのラベルを見た際、「国産牛」とだけ書かれているものは乳牛系または交雑種であり、「黒毛和牛」あるいは「和牛」と明記されているものとは素材そのものが根本的に別物です。