黒川デザインの真骨頂は、建築だけにとどまらない。日本のインダストリアルデザイン業界に地殻変動を起こしたのが、1970年代から展開された代表作の数々だ。
とりわけ黒い合成ゴムと金属を組み合わせた「GOMシリーズ」は、当時の工業デザインにおける素材の常識を覆した。硬質で冷たい印象だった文房具や卓上小物が、ゴムのしっとりとした触感を得ることで、人間の手に寄り添う愛おしい道具へと変貌を遂げたのである。さらに、刃物やカトラリーの造形を極限まで削ぎ落とした「K-SERIES」は、機能美と静けさが同居する名作として知られる。
かつて日本インダストリアルデザイン協会でも議論を呼んだこれらの作品は、半世紀近くが経過した現在も色あせることなく、世界中のコレクターを魅了し続けている。