黒川博行氏の筆致が他の追随を許さない最大の理由は、警察小説における圧倒的なリアリズムと大阪弁の会話劇にあります。美術教師、会社員を経て作家デビューした黒川氏は、徹底した取材をもとに警察組織の内部力学やヤクザ社会の資金源(シノギ)の構造を克明に描き出してきました。
2014年に『破門』で第151回直木賞を受賞した看板作『疫病神シリーズ』(二宮・桑原コンビ)にも見られるように、金融詐欺、建設利権、手形パクリ、宗教法人乗っ取りなど、金が動く現場の描写は極めて精緻です。『カウントダウン』で培われた「犯罪とカネの流れ」を追う構造分析の冴えは、黒川作品に通底する最大の武器であり、読者を惹きつけてやまない魅力の根源と言えます。