独特の立体感と深みのある発色は、どこから生まれるのか。静岡県内の古い染物店を訪ねると、ツンと鼻をつく防染糊の香りと、職人たちの吐く白い息が工房に満ちていた。
下書きなしで布地に直接糊を絞り出していく「筒描き(つつがき)」の技法は、まさに一発勝負。ミリ単位の狂いも許されない手作業だ。刷毛で何度も染料を重ね、元手となる木綿生地の奥深くまで色を染み込ませていく。プリント技術が極限まで進化させたデジタル時代だからこそ、手作業の揺らぎや塗料の凹凸が醸し出す「生の手触り」が、見る者の心を揺さぶって離さない。