情報が目まぐるしく交錯し、あらゆるものが消費されていく現代において、絹谷幸太の彫刻は悠久の静けさを与えてくれる。彼が扱う御影石や黒御影石、大理石は、数千億年という途方もない時間を超えて地球上に存在してきた。
彫刻家がノミを打ち、研磨する行為は、石の体内に眠っていた「空間」と「光」を解き放つ作業にほかならない。削り取られた破片すらも作品の一部であり、自然への謙虚な姿勢が作品全体を貫いている。
絹谷が創り出す立体空間に足を踏み入れると、都市の喧騒は遮断され、石が保持する大地のグラウンディング(接地感)が身体へと伝わってくる。それは、過剰に情報化された社会で疲弊した現代人に対する、静かなリセットの場でもあるのだ。