メガホンを取るのは、『悪人』『怒り』『流浪の月』などで人間の極限の心理を鋭く描き出してきた李相日監督。そして配給を手掛けるのは日本映画の盟主・東宝だ。なぜ今、この最強の布陣が組まれたのか。それは、一筋縄ではいかない「芸の魔力」と人間ドラマを映像として成立させるために、妥協のない巨額の制作費と最高峰の技術を結集する必要があったからだ。
李相日監督の演出法は妥協を許さないことで知られる。一シーンに対して何十回ものテイクを重ね、演技者の表面的な繕いを剥ぎ取り、魂の叫びを引っ張り出す。東宝のバックアップのもと、再現された明治・大正・昭和の歌舞伎座のセットや壮麗な衣装は、単なる背景ではなく生き物のようにキャストを飲み込み、物語に圧倒的な説得力を与えている。