歴史の闇に埋もれかけていたこの特異な君主の生涯が、いまエンターテインメントの最前線で再び熱い視線を浴びている。映像配信サービス産業の急速な拡大に伴い、近代史を題材にした重厚なコンテンツへの需要が世界規模で高まっているためだ。
代表的な動きとして、Netflixによる国際的な歴史ドラマの拡充や、NHKオンデマンドで配信されている重厚な伝記ドキュメンタリーの再脚光が挙げられる。かつてベルナルド・ベルトルッチ監督が映画『ラストエンペラー』で描き出したオリエンタリズム漂う映像美から一歩進み、よりリアリズムと多角的な視点を重視したドキュメンタリーが相次いで制作されている。
視聴者は、単なる善悪の二項対立ではなく、激動の地政学に翻弄された個人の内面や心理的リアリティを求めている。激動の東アジアを駆け抜けた溥儀の複雑怪奇な生涯は、グローバル配信時代における格好のテーマとして、新たな世代の関心を引きつけてやまない。