勝興寺が全国的な観光・文化財シーンで脚光を浴びている最大の契機は、文化庁による国宝指定と、それに先立つ「平成の大修理」の完工にあります。地方都市に所在する寺院建造物が国宝に指定されるのは極めて異例であり、そこには建築史・文化史における決定的な価値が存在します。
勝興寺の本堂は、寛政7年(1795年)に再建されたもので、間口約39.3メートル、奥行き約37.4メートル、高さ約23.5メートルという、全国の浄土真宗寺院の本堂の中でも屈指の巨大建築です。西本願寺阿弥陀堂を模したとされる重層的な屋根構造や、加賀藩前田家との強固な結びつきを示す格式高い木造意匠は、江戸時代後期の寺院建築の到達点として極めて高く評価されました。
さらに、1998年(平成10年)から2026年(令和3年)にかけて実施された「平成の大修理」では、重要文化財建造物全12棟を完全に解体し、木材の腐食補修や耐震補強、往時の彩色復元を徹底的に実施。約170億円という空前の事業規模と職人たちの伝統技術の結集によって、「江戸時代の空気感をそのまま体感できる奇跡の空間」が現代に再生されたのです。