絵の具トラブルに対処する際、対象が「水彩」なのか「アクリル」なのか、そして付着した対象が何であるかによって、打つべき一手は根本から異なります。特に学校教材や趣味の世界で混同されやすい水彩絵の具とアクリル絵の具の違いと落とし方を正しく判別することは、衣類の生死を分ける分岐点となります。
最大の違いは、アクリル絵の具が「アクリルエマルジョン(合成樹脂)」をバインダーとして使用している点です。アクリル樹脂は水分が蒸発するとポリマー同士が化学結合し、耐水性の強固なプラスチック皮膜を形成します。そのため、水彩絵の具と同じ感覚でアルカリ洗剤や水洗いを施しても一切反応しません。エタノールやアセトンなどの有機溶剤で皮膜を膨潤溶解させる必要があります。
一方、住居内のアクシデントとして頻発するカーペットや壁についた絵の具の落とし方では、丸洗いができないという制約が伴います。カーペットに付着した場合は、ぬるま湯で薄めた台所用洗剤を雑巾に含ませ、汚れの「外側から中心に向かって」トントンと叩き出します。内側から外へ擦るとシミの面積が拡大するため注意が必要です。ビニール壁紙の場合は、固く絞った雑巾で水分を与えた後、メラミンスポンジでごく軽く撫でるように擦ると壁紙を傷めずに顔料だけを研磨回収できます(紙製や布製の壁紙は水分を急速に吸水するため、擦らずに吸水シートで吸い取る処置に留めてください)。
また、子どもの身体で最も汚れやすい水彩絵の具の手や爪の汚れ落としにおいては、ゴシゴシ擦る皮膚刺激を避け、オリーブオイルやクレンジングオイルを手に馴染ませてから石鹸で洗うと、角質や爪の甘皮に深く入り込んだ顔料も肌を傷めず綺麗さっぱり落とせます。