組織と個人の凄まじいせめぎ合いを可視化した格好の事例が、映画監督の大島新が手がけたポリティカル・ドキュメンタリー『なぜ君は総理大臣になれないのか』の舞台となった香川1区の攻防である。強固な地盤と業界団体の後押しを受ける大物議員に対し、草の根の辻立ちと個人の熱量で挑み続ける候補者の姿は、日本の選挙が抱える泥臭い構造を浮き彫りにした。
カメラが捉えたのは、単なる政策論争ではない。冠婚葬祭への顔出し、後援会名簿の執拗な確認、地元の有力者への挨拶回りといった、永田町の論理が地方の日常に深く根を張る実態だ。ドキュメンタリーが炙り出したのは、強固な地盤を持つ側にとっても、それを切り崩そうとする側にとっても、最終的には一人ひとりの有権者をどう囲い込むかという、執念の「組織化競争」に他ならないという冷徹な教訓であった。