作品のクオリティを極限まで高めているのは、妥協をいっさい排した現場の狂気とも言えるこだわりだ。映画監督と主演の福山は、クランクイン前の数ヶ月間にわたり連日のように脚本のディテールを詰め直し、1行の台詞、一瞬の間合いに至るまで徹底的な議論を重ねたという。
美術セットの細部から照明の角度、暗闇の「黒」の表現方法に至るまで、視覚効果に頼らない生々しい映像美が追及された。撮影現場に立ち会った関係者は、「監督と主演のあいだに一切の言葉が必要ない瞬画が何度もあった。研ぎ澄まされた集中力が現場全体を支配していた」と語る。命を吹き込むような二人の執念が、画面から漂う本物のリアリティを生み出している。