ネット掲示板やSNSで定期的に浮上する「荷物運びで日給30万円」という噂。噂の多くは「高線量エリアで防護服を着て荷物を数分間運ぶだけ」といった具体的な作業内容を伴って語られる。だが、現場を知る労働問題の専門家や元作業員は、口を揃えてこれを「事実無根」と一蹴する。
高額報酬の噂が作られる背景には、複雑な求人募集のカラクリがある。一次請けから二次、三次、四次へと続く多重下請け構造のなかで、求人広告を出すブローカーが存在する。一部の悪質な仲介業者が、求職者の注意を引くために誇大広告を打ち出し、実際には標準的な日給であるにもかかわらず「危険手当込みで破格の収入になる」と思わせるケースが後を絶たない。ひどい場合には、登録料名目で金を騙し取る詐欺や、違法な闇バイトへの誘い込みに使われることもある。
さらに重要なのが被ばくリスクの管理だ。放射線業務における作業員の被ばく線量は、法令で厳格な限度が定められている。仮に1日で30万円分もの過酷な被ばくを伴う作業を行わせれば、労働安全衛生法および電離放射線障害防止規則に即座に違反する。事業者は業務停止命令や刑事罰を免れない。人間を一回使い捨てるような非現実的な雇用が成立する余地は、法制度的にも存在しないのだ。
ネットで流布される高額求人の大半は、実態を伴わない虚構であり、ネット空間で長年一人歩きを続ける高額バイト都市伝説の一種であると断定できる。安易な儲け話の陰には、個人情報の流出や金融詐欺の被害が潜んでいることを強く警戒しなければならない。