世間では「反省が足りない」「本人の甘え」と厳しく断じられることが多かった田代氏の再犯ですが、精神医学や臨床心理の観点からは全く異なる側面が指摘されています。覚醒剤が引き起こす薬物依存症は、個人の意志の強弱ではなく、脳の神経回路が薬物によって不可逆的な変容を遂げてしまう「慢性疾患」であるという点です。
覚醒剤を一度体内に取り込むと、脳内のドーパミンが異常放出され、日常では決して味わえない強烈な快楽体験が記憶に刻まれます。薬の効果が切れた後には激しい抑うつや倦怠感、強迫的な渇望が生じます。田代氏自身も後に講演で、「頭では絶対にやってはいけないと分かっているのに、孤独やプレッシャーに直面した瞬間、悪魔の囁きのように薬物が脳裏を支配する」と、当時の心理状態を生々しく述懐しています。
著名人ゆえの過密スケジュールや過度のストレス、スキャンダル後の孤立無援な環境がスリップ(再使用)の引き金となり、自力でのコントロールが不可能な状態に追い込まれていました。刑罰による懲罰だけでは脳の病理を根本的に治療できないという現実が、彼の繰り返された逮捕によって浮き彫りとなったのです。