9番街レトロの強みは、ボケの特異性だけではない。相方である京極風斗の、冷徹かつ的確なツッコミがあってこそ、彼のボケは初めて「笑い」として成立する。二人の関係性は、従来の主従関係のようなコンビ像とは一線を画している。
京極は彼の暴走を無理に止めようとはしない。むしろ、その暴走がどこに行き着くのかを冷ややかに観察し、最も効果的なタイミングで一言を放つ。この絶妙なディスタンスと不協和音こそが、彼らの漫才を唯一無二の作品に仕上げているのだ。互いの個性を殺さず、むしろ衝突させることで生まれるエネルギーは、劇場に足を運ぶファンを魅了し続けている。