19世紀後半、哲学者フリードリヒ・ニーチェは著書『善悪の彼岸』において、従来の道徳観に強烈な一撃を加えた。彼は、絶対的な「善」や「悪」といった価値基準そのものが、特定の歴史的・社会的立場によって捏造された道徳に過ぎないと破棄を迫ったのだ。
ニーチェが提示した強者の道徳と弱者の道徳(ルサンチマン)の分析は、善悪の固定的な対立を根本から再構築した。彼にとっての真の対極とは、既存の道徳的評価に縛られることのない「生の肯定」や「創造的意志」であった。固定観念としての二分法を疑う姿勢は、現代を生きる私たちの思考空間を大きく拡張する。