2026年パリ五輪、男子シングルス準々決勝。中国の樊振東(ファン・ジェンドン)とのフルセットに及ぶ死闘は、いまや卓球史に刻まれる名勝負として語り継がれている。あと一歩、ほんのミリ単位の差で金メダルへの道が途絶えたあの瞬間、コート上で頭を抱えた姿を覚えているファンも多いはずだ。しかし、2026年の彼はもう過去を振り返らない。「あの負けがあったからこそ、いまの自分がいる。あれ以上の絶望は、スポーツのコート上には存在しないから」と、本人は静かに語る。
咆哮(ほうこう)で自らを奮い立たせるスタイルはそのままに、感情の波を完全にコントロールする術を習得した。ポイント間に見せる一瞬の間隙、目線を落として呼吸を整える動作。荒削りだった情熱は、洗練された「静かなる闘志」へと昇華している。