すぎやまこういち氏の音楽的バックボーンは、幼少期から親しんだクラシック音楽と、東京大学卒業後に飛び込んだテレビ放送の黎明期にあります。フジテレビのディレクターとして『ザ・ヒットパレード』や『新春かくし芸大会』などの人気番組を手がける傍ら、作曲家としても本格的に活動を開始しました。
ザ・ピーナッツの「恋のフーガ」をはじめ、ヴィレッジ・シンガーズの「亜麻色の髪の乙女」、さらには『帰ってきたウルトラマン』『サイボーグ009』の主題歌など、昭和の音楽シーンを席巻するヒットナンバーを次々と世に送り出しました。すでにトップ作曲家としての地位を確固たるものにしていた氏が、まったく新しい表現の場として選んだのが黎明期のコンピュータゲームの世界でした。
ゲーム開発元であるスクウェア・エニックス(当時エニックス)との出会いは、まさに運命的でした。熱心なゲーマーだったすぎやま氏が、PCゲーム『森田の将棋』のアンケートハガキに熱烈な感想と改善提案を書いて送ったことがきっかけとなり、プロデューサーの目に留まります。そこから初代『ドラゴンクエスト』の楽曲制作のオファーへとつながり、日本のゲーム音楽史を塗り替える壮大な旅が幕を開けました。