1950年代末、ひとりの日本人女性がアジアン・モダニズムの熱気に沸くジャカルタの地に降り立った。東京の平穏な家庭で育った「根本七保子」という名の少女。しかし、彼女の内に秘められた知性と研ぎ澄まされた美意識は、当時のインドネシア初代大統領であるスカルノ大統領の心を瞬時に射止めることとなる。
当時のインドネシア大統領府を取り巻く国際情勢は、まさに冷戦の激浪の真っただ中であった。そのただ中で、彼女は単なる権力者の妻にとどまらず、夫の政治的孤独に深く寄り添い、国際外交の舞台裏で独自の直感を静かに振るった。「東洋の真珠」という壮大な異名は、当時の欧米メディアや外交官たちが彼女の気品と聡明さに息を呑んで授けた勲章そのものだ。波乱に満ちたその生涯は、運命に翻弄されたヒロインではなく、自らの知略と度胸で栄光を掴み取った戦士の物語である。