先斗町歌舞練場レトロ建築の歴史を紐解くと、大正末期の1925年に着工し、1927年(昭和2年)3月に完成した鉄骨鉄筋コンクリート造(地上4階・地下1階)の近代建築であることが分かります。設計を手がけたのは、当時「劇場建築の名手」と謳われた大林組の技師・木村得三郎(大阪松竹座なども担当)です。
竣工当時、新聞各紙から「東洋趣味を加味した近代建築」と絶賛された外観は、重厚なスクラッチタイル貼りの壁面とアール・デコ調のアーチ窓が見事な調和を見せています。なかでも建築ファンを唸らせるのが、屋上に据えられた先斗町歌舞練場屋上鬼瓦とランタンの意匠です。
建物の四隅に鎮座する巨大な鬼瓦は、中国の伝統舞楽面「蘭陵王(らんりょうおう)」を型取ったもので、劇場の守り神として鴨川を見下ろしています。さらに、屋上コーナー部に配置されたエキゾチックな円筒形ランタン照明や幾何学レリーフは、西洋の構造技術と東洋の神秘的な装飾美を融合させた圧巻のディテールです。
文化財級の建造物を維持するため、先斗町歌舞練場耐震改修の現在の状況についても計画的な保存修繕が重ねられています。外観の歴史的意匠や内部劇場の風情を損なうことなく、最新の防災・構造補強を施すことで、現役の劇場空間としての安全性が高水準で維持されています。