『童夢』は、巨大なマンモス団地「堤団地」で頻発する不審死事件を巡るサイキック・サスペンスです。警察の捜査が難航する中、事件の元凶が団地に住む無邪気で残酷な老人・吉川(チョウさん)の超能力であること、そして新たに団地へ引っ越してきた幼い少女・悦子もまた同等の力を持つ超能力者であることが明かされます。日常の象徴である公営団地を舞台に、目に見えない力による破壊と命を削る心理戦が静かに繰り広げられます。
本作の画期的な点は、壁が球状に窪む衝撃波の描写や、団地の冷徹なパースペクティブ、日常に潜む狂気を極限のリアリズムで描き出した点にあります。のちに描かれた『AKIRA』が「ネオ東京」という巨大なサイバーパンク都市の崩壊と再生を描く壮大なディストピア巨編であるのに対し、『童夢』は閉鎖的な団地空間における濃密な人間ドラマと純粋なサスペンスという明確な違いを持ちます。この凝縮された完成度の高さが、かえって映像化の難易度を跳ね上げる要因となりました。