大人の発達障害をめぐっては、ソーシャルメディアや掲示板などで極端な言説が横行しており、当事者や家族をミスリードする要因となっています。ここで代表的な誤解を是正しておきます。
誤解1:「大人になってから発達障害を発症した」という勘違い
「社会人になってから急に発達障害になった」と語られることがありますが、医学的に発達障害は生まれつきの先天的な脳機能特性です。大人になって発症するものではありません。幼少期・学生時代は親の手厚いサポートや高い知能、自由度の高い環境によって問題が不可視化されていたものが、社会に出て「自己管理」と「複雑な対人配慮」を強いられたことで、初めて顕在化したに過ぎません。
誤解2:「仕事ができない=すべて発達障害」という短絡
単なる職場の教育不足、過重労働による脳疲労、適応障害、うつ病による認知機能の低下をすべて「発達障害」と自己診断してしまうケースが目立ちます。ネット上の簡易チェックリストで高得点が出たとしても、それは過度なストレスによる一時的な注意力散漫である可能性も十分に考えられます。安易なラベリングは真の原因(過労やパワハラなど)を見失わせる危険を孕んでいます。
誤解3:「発達障害者は共感性がゼロで冷酷な人間である」という偏見
ASDの男性は「冷血」「人の心がない」と揶揄されることがありますが、これは完全な誤謬です。情動的共感(相手の感情に自動的に引きずられること)の表出が不器用なだけであり、論理的・認知的な理解を通じて「相手が困っているから助ける」という倫理的判断を持つ当事者は多数存在します。感情表現の出力インターフェースが定型発達者と異なるだけであり、人間性そのものの欠如ではありません。