『あたしンち』の凄みは、劇的な事件がほとんど起きないことにある。宝くじが当たるわけでも、誰かが大病を患うわけでもない。ただ、夕飯のおかずが少なくて文句を言う、トイレットペーパーの芯を誰が替えるかで揉める、といった些細な日常が淡々と描かれる。
原作者のけらえいこ氏が投影した「昭和の家庭の空気感」は、時代を超えても色褪せない。むしろ、核家族化が進み、個々が孤立しがちな現代において、あの騒がしくも温かい「タチバナ家」の居間は、一種のユートピアとして機能している。お母さんという強烈な太陽が中心にいるからこそ、あの四人家族の絶妙なバランスが保たれているのだ。