インターネット上の検索トレンドを見ていると、「横浜や神戸、福岡にあるアンパンマンこどもミュージアムの高知版」と誤認しているケースが少なくありません。しかし、この認識には大きな隔たりがあります。
都市型施設は、日本テレビグループや大手エンターテインメント企業が主導する「未就学児向けの商業エンタメ施設」です。それに対し、香美市立やなせたかし記念館は、やなせ氏の父の故郷である旧香北町が建設した「公営の本格美術館」です。やなせ氏自身が建設資金や多くの作品を寄贈し、建物の内外装や展示演出に至るまで自ら細かくディレクションを行いました。
館内には、薄暗い通路を抜けると現れるパン工場の精巧なジオラマや、アンパンマンワールドの住人たちが住む小さな街並みがあり、子どもが覗き込んで遊べる工夫は凝らされています。しかし、爆音で音楽が鳴り響くパレードやキャラクターグリーティングはありません。鳥のさえずりと緑豊かな自然に包まれた環境の中で、静かに作品と対峙するための空間設計が徹底されているのです。