一般的なバトル・格闘漫画において、戦闘力のインフレはしばしば作品のパワーバランス崩壊を招くリスクを孕む。しかし本作における超人強度は、単純な戦闘の勝敗を決める絶対値ではなく、リング上のドラマを加速させるための「枷(かせ)」であり「挑戦状」として設計されている点が決定的に異なる。
嶋田隆司が紡ぐプロットの巧みさは、数値の大小がそのまま試合の結末に直結しないロジックを確立したことにある。1000万パワーの猛攻を受け止め、相手のエネルギーを逆利用する関節技や、仲間への想いが引き出す奇跡の出力。超人強度が高ければ肉体の硬度やタフネス、技の推進力には優れるものの、精神的動揺や油断、技の精度一つで下位の超人が上位を喰らい尽くす。この「数字の絶対性」と「精神の不確定性」のせめぎ合いこそが、ゆでたまご作品特有のスリリングな試合展開を生み出している。