マイナス30度。まつ毛が一瞬で白く凍りつき、素肌を外気にさらすと鋭い痛みが走る極限の世界では、衣服選びのわずかな隙が深刻な体温低下を招く。だが、怯える必要はない。現地のプロフェッショナルたちが徹底しているのは、汗冷えを遮断しながら強固な断熱層を作る「3層(ベース・ミドル・アウター)レイヤリング」の黄金ルールだ。
第1層(ベースレイヤー)で最も犯してはならない過ちは、吸水速乾性のない一般的な日常用発熱インナーやコットン素材を選ぶことだ。スノーシューや徒歩移動でかいた微量の汗が冷えると、体温は一気に奪われる。正解は、天然の調湿・保温機能を備えた中厚手から極厚手のメリノウール一択。第2層(ミドルレイヤー)にはフリースや薄手のインナーダウン、あるいは目の詰まったウールセーターを重ね、デッドエア(動かない空気の断熱層)を抱え込む。そして最外層の第3層(アウター)は、風と雪を完全にブロックする防風・防水・透湿性に優れたシェルジャケットや厚手のロングダウンを配置する。この3層構造が隙間なく噛み合って初めて、マイナス30度の屋外でも衣服内は30度前後の穏やかな春の気候を維持できる。