福山ローズのルーツを語る上で欠かせないのが、数学者であり折り紙作家の川崎敏和氏が考案した「川崎ローズ」の存在です。幾何学的な計算に基づき、平面の紙をねじりながら立体へ組み上げる川崎氏の薔薇は、世界中の折り紙愛好家に衝撃を与えました。しかし、オリジナルの川崎ローズは極めて難易度が高く、熟練者でなければ完成させることが困難という高い壁が存在していました。
そこで立ち上がったのが、戦後復興のシンボルとして薔薇の街づくりを進めていた広島県福山市のボランティアグループ「折り紙ばらの会」でした。2010年代初頭から普及活動が進められ、川崎氏の許諾のもと、「誰もが美しく折れる薔薇」を目指して工程を再構築。複雑だった内側の折り込みを整理し、再現性を飛躍的に高めたモデルこそが「福山ローズ」です。
両者の決定的な違いは、中心部の構造と底面の閉じ方にあります。川崎ローズ(代表的な「薔薇」や「開いた薔薇」)は花びらの重なりが複雑で立体保持力が高い反面、途中で展開図のような立体把握能力が求められます。一方の福山ローズは、格子状の折り筋から規則的に立ち上げられるよう設計されており、完成時の華やかさを損なわずに難易度を大幅に引き下げることに成功しました。現在では福山市の公式シンボルアートとして定着し、世界中に愛好者を広げています。