熱中症の予防や応急処置において首を冷やすこと自体は、日本救急医学会などのガイドラインでも推奨される有効な手段です。成否を分けるのは「冷やす位置」と「冷やし方」にあります。
効率よく全身の血液を冷やすためには、皮膚の浅い層を太い血管が通っている部位をターゲットにする必要があります。首における正解は、首の左右両脇にある「内頸動脈・外頸動脈」が走行するエリア(喉仏の左右斜め後ろ、胸鎖乳突筋の前縁)です。ここを流れる大量の血液を適度に冷やすことで、循環する血液を介して効率的に全身のクールダウンを図ることが可能になります。
一方で、多くの人が無意識に冷やしてしまう「首の後ろ(うなじ)」には注意が必要です。うなじ周辺には自律神経の中枢である延髄や太い神経幹が集中しています。氷点下の保冷剤で首の後ろを過度に冷やすと、交感神経と副交感神経のバランスが急激に乱れ、激しい頭痛、めまい、吐き気、急激な血圧上昇といった体調不良を引き起こすトリガーとなります。首を冷やす際は「後ろではなく左右前寄りを、包み込むように優しく冷やす」のが解剖学的な鉄則です。