back numberのソングライティングにおいて最大の武器は、格好をつけない「人間の情けなさ」をありのままにさらけ出す姿勢にあります。当時の音楽専門誌のインタビューや特番の手記において、清水依与吏は『恋』の制作背景について「自分が経験してきた、どうしようもない片思いの記憶を嘘偽りなくパッケージした」と語っています。
バンド初期の楽曲には、清水自身のリアルな失恋体験や劣等感が色濃く反映されています。高校時代や地元・群馬での鬱屈とした感情、好きな人にとって自分は「背景の一部」でしかなかったという痛烈な体験が、『恋』の生々しいディテールを支えています。
名盤として名高いメジャー2ndアルバム『blues』の4曲目に収録された本作は、プロデューサーに島田昌典を迎え、ストリングスとピアノを大胆に導入した緻密なアレンジが施されました。叙情的なバンドサウンドと清水の絞り出すようなファルセットが融合したことで、個人的な失恋の手記が、何百万人もの共感を呼ぶ普遍的なポップミュージックへと昇華されたのです。